「ゴブリンスレイヤー!」

kenkyukan2018-10-11

 この秋からのアニメ、これはという原作からのアニメ化が多すぎてうれしい悲鳴を上げているところですが、その中でもこれはと思うものを今ひとつ挙げるとすれば、「ゴブリンスレイヤー(GOBLIN SYAER!)」でしょうか。原作はGA文庫の小説で、先日よりスクエニの雑誌で本編+外伝の合計3作と大々的にコミカライズされていて、以前から非常に推されている作品となっていました。今季数ある原作アニメの中でも、すでにかなり話題となっていたこの作品、アニメの出来も期待通りとなっていました。

 その内容は、ファンタジー世界でゴブリン退治をひたすら積み重ねる冒険者の活動を描いたシリアスでハードなファンタジー。他の冒険者たちが、他のもっと強いモンスター、もっと高難易度とされるクエストへとやがて進んでいくのに対して、この男は最も低級とも言えるゴブリンを殺す稼業を延々と続ける。その執拗なまでの徹底した仕事ぶり、生き様に強烈に惹かれる物語となっています。

 ゴブリンといえども群れを成して狡猾な戦術で立ち向かってくる彼らは脅威であり、その退治に際して必要な準備を周到に行い、的確な戦術と戦闘能力で確実に全滅させていく。同じゴブリン退治を繰り返す話として、少し前にアニメ化した「灰と幻想のグリムガル」がありますが、あちらが初心者の冒険者がやむをえずゴブリンを倒すクエストを行っているのに対して、こちらはもうすでにかなりのベテラン熟練者の域に達していながら、ある理由のためにひたすらゴブリン殺しを行う。残虐な描写も頻繁に見られる、よりシビアでハードな世界観となっていて、こうした作風には好みが割れるかもしれませんが、ひとつの本格ファンタジーとして説得力と魅力のある設定だと思っています。

 もうひとつ、この作品で特筆すべきことは、もとは「ウェブ上でAA(アスキーアート)と組み合せて公開されていた作品」であること。それがのちに小説として書き直しされたものが、GA文庫の編集者によって拾われて商業化されたという特殊な出自を持っています。

 さらには、いわゆるTRPGテーブルトークRPG)のセッション、そのゲーム的な要素を元にしているのも特徴で、いかにクエストを確実に達成するかという着眼点で描かれているのも魅力です。主人公のゴブリンスレイヤーや周囲を取り巻く人々がすべて肩書きとしての職業名で呼ばれたり、あるいは「He does not let anyone roll the dice.」という作品のサブタイトルにもそれが表れています。アニメでも1話最後でダイスを振る効果音がこっそりと差し込まれたり、こうした設定を知っている人ならおっと思うような要素が織り込まれています。

 また、TRPGのみならず、例えばウィザードリィ世界樹の迷宮のような厳しいバランスで知られるダンジョンRPG、同じく高難易度で知られるダークソウルのような3Dアクションが好きな人にとっても、いろいろと思うところがあるかもしれません。アニメで興味が出てきたなら、こちらも完成度の高いスクエニのコミック版にも目を向けてほしいですね。