ついに「このはな綺譚」アニメ放送開始!

kenkyukan2017-09-27

 夏のアニメもそろそろ終了を迎え、秋アニメをしばし待つ時期に差し掛かりましたが、ここでまずは以前よりずっと原作を推してきた「このはな綺譚」(天乃咲哉)をおすすめしたいと思います。秋アニメでも早い時期に始まるこの作品にまずは注目してほしい。
 「このはな綺譚」は、幻冬舎月刊バーズの連載で、神や妖怪が存在する和風ファンタジーの世界で、旅館の仲居をして日々を過ごす狐の娘たちの物語となっています。旅館で仲居というと、アニメではあの「花咲くいろは」を思い出す人もいるかもしれませんが、ここはまったく違う話であるということを強調しておきたいと思います。

 「花咲くいろは」は、現実のお仕事を描くコンセプトでリアルな描写も多いのに対して、こちらはあくまでファンタジー。確かに仲居の仕事は簡単なものではなく、主人公が新人ということもあって時に厳しい描写も見られますが、しかし基本的に目線はとても優しい。まだ仕事に慣れない主人公に対して、教育係を勤める先輩を始めとした同僚たちが、みな彼女を気遣って優しく配慮してくれる。お客さんたちも基本みないい人で、やはり従業員たちと仲良く接してくれます。

 さらに、旅館を取り巻く美しい自然の描写が、その優しい雰囲気をさらに盛り上げてくれます。夢と現の境に立つという「此花亭」は、周囲では美しい桜が咲き誇り、瀟洒な旅館の建物と涼やかな内装と共にすばらしい光景を見せてくれます。特に天乃さんのカラーイラストは毎回絶品で、彩り豊かなこの作品の世界観を象徴していると思います。

 作者の天乃さんは、かつてエニックス(現スクエニ)のステンシルでデビューした作家で、のちにKADOKAWA一迅社など他社へと活動の場を移していきました。この「このはな綺譚」は、かつては一迅社百合姫Sで2009年から始まった連載で、その時のタイトルは「此花亭奇譚」。この時から人気は高かったのですが、しかし掲載誌の休刊によって1年ほどの連載で中断となり、以後長い間移籍先が見つからない状態となっていました。

 それが、2014年になって、ついに幻冬舎コミックバーズ(現月刊バーズ)にて連載再開が決定。作者の天乃さんの話によると、複数の出版社から連載を受け入れる話はあったものの、どうしても条件が合わず実現しなかったのを、最後にバーズが条件を認めてくれたとのこと。そんな話もあって、「此花亭奇譚」の頃から追いかけていた自分にはとてもうれしい連載再開でした。

 あれから3年。2017年3月に発売されたコミックス5巻において、待望のアニメ化の告知も行われ、この10月よりついに放送開始。これまでの原作の経緯からしても、あるいはエニックス時代から天乃さんを追いかけてきた経緯からも、本当に楽しみで仕方がない! 最新コミックス6巻も先日発売されたばかりで、是非ともこの機会に注目してほしいと思います。