「メガロマニア」と檜山大輔。

kenkyukan2017-09-22

 コミックスの整理で10年ほど前の単行本を多数目にする機会を得たのですが、その中でこれはと目を引いたものがいくつかありました。そのうちのひとつが、檜山大輔さんの「メガロマニア」。これが最初の連載で、今はなきガンガンパワードの連載のひとつになります。その当時は季刊から隔月刊へと移行し、さらに新規連載に力を入れていた頃だったと思います。
 肝心の内容ですが、現代風のファンタジー世界を舞台に、人間と人間に似た種族「亜人」たちが暮らす町での日常を描くアクションファンタジーでしょうか。亜人たちは、この世界で人間たちから露骨に差別され、虐げられて生活していました。主人公はそんな中で人間と亜人のハーフとして警官の職務に当たり、ふたつの種族の確執に悩まされ苦しみながらも、それを乗り越えようと必死に奮闘していきます。

 最近も、こうした「亜人」的な存在と人間との関係を描く物語にいくつか心当たりがあるのですが、これもかつての先駆的な存在のひとつかもしれません。檜山さんの作画はポップでコミカルな雰囲気も感じられ、見た目はそこまで暗いイメージばかりでもないのですが、しかし描かれるストーリーは一様にシビア。最後には争いが高じてついに破滅的な展開まで迎えることになります。

 しかし、そうしてストーリーが大いに盛り上がったまさにその時期に、このマンガは「第一部完」として連載中断、実質的な打ち切りとなってしまうのです。その理由は、掲載誌だったパワードの休刊にほかなりません。連載最終盤の2009年、スクエニ雑誌の大再編が行われ、このガンガンパワードと同時にガンガンWINGも休刊、新しく創刊されるガンガンONLINEガンガンJOKERへと再編されることになったのです。
 この再編によって、多くの連載が終了することとなり、この「メガロマニア」もそのひとつとなりました。また、これは檜山さんが新雑誌のJOKERで新しく始める連載企画も関係していたようで、そちらで「ひまわり」という新連載を始めることになりました。これは、当時人気だった同人ノベルゲームのコミカラ イズで、決して悪い内容ではなかったとは思いますが、しかしその終了後も第一部完となった「メガロマニア」の再開はなし。こちらはまさに完全な打ち切りとなってしまったのです。

 スクエニにおいて、雑誌の休刊によって活躍の場を失い、消えてしまう作家は本当に多いです。この檜山さんの場合、連載こそ打ち切りになったものの、新雑誌で新しい連載を行う機会を与えられたわけで、その点はまだ全然よかったと思います。しかし、それでもこの良作だった「メガロマニア」が中途半端な形で終わったのはやはり惜しい。檜山さんは、この後にも何度か連載を行っていますが、いずれも短期間で終わるなど成功しきれなかったことを見ても、やはり惜しすぎる初連載だったと思うのです。